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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年11月1日掲載

第7回 世界最小TV電話の開発 前編

 

私は回路の見通しが立った段階で、自分の時間をデザインの検討に集中できるようにしました。まずコンシューマ対象の商品ですから、デザイン優先にし「かわいい」「親しみ易い」をモットーにしました。早速いくつかスケッチを作り、デザイン部門の研究スタッフと検討をしました。

TV電話のスケッチ案1 TV電話のスケッチ案2
図1:TV電話検討段階でのスケッチ案
イラスト:(株)アイ・ビー・イー 坂井裕

その結果、次のようなTV電話の姿が出来上がりました。

図2:TV電話のスケッチ。
イラスト:(株)アイ・ビー・イー 坂井裕

以前お話しした三鷹INSの実験で得た教訓から、TV電話と言っても接続と同時に自分の映像が無差別に相手に送出されることは一般に好まれません。特に女性はプライバシーや犯罪という面から敬遠しがちであることが解っていましたので、何とかこれを回避する機能を開発しようと考えました。私は"名刺機能"というものを提案し、実装することに決めました。つまりあらかじめ"自分の画像も入れた名刺"を作りメモリに保存しておき、自分の顔を出したくない時は自分の画像を送出する代わりにこの名刺を送るのです。自分の画像を送りたくないからといって、何の前触れもなく一方的にこちらの画像送信を拒否すると相手は気分を害します。そこでお詫びも添えて名刺を送れば相当の気分を和らげられると考えた訳です。後日この名刺機能も含め、様々なTV電話の良好なコミュニケーション実現の方法を「TV電話の作法」と称し商標登録をしました。中にはいわゆるエチケットに近いものもありました。

次に、検討チームの結果を基に製品計画と予算化の作業が始まりました。約1ヶ月後、幹部に対し計画の概要を説明して了承が得られ、いよいよ製品化が開始されることになりました。当時私は日立で横断的な組織に所属していたのでここまで推進することができましたが、いざ製品化という段階で製品の取り扱い事業部をどこにするかが問題になりました。つまり「TV電話」は通信部門、家電部門のどちらに扱わせるのが望ましいかという議論です。電話は開放されてから家電部門で扱っていました。結局「TV電話」と言っても当面はビジネスユースが多いだろうから、ネットワークソリューションの一環で商売するのが望ましいだろうとう結論に達し、通信部門で扱うことになりました。


後編につづく

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(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 坂井 裕)

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